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東京・新宿・歌舞伎町④
「暖かくなったな。」
「そうね。寒くないのはありがたいわ。東京の冬は何年住んでもダメ。寒いと心が寂しくなるね。」
「俺は東京が好きだな・・・街にエネルギーがある。歌舞伎町はガキの街になっちまったけどな。」
「そうだよね〜。30年前はオジサンの街だった。」
「一番街だって、太ったスーツのオジサンでいっぱいだった。」
「今は高校生にもならない子供が多い。」
「・・・」
「・・き?」
「・ゆき?」
「・・ん?」
「子供、育てたかった。」
「そうね。カズ君に似た、可愛い男の子だったのよ。!。。」
「今からじゃ、無理かな?アハハハハ!」
和真は自分の方へ美由紀を思い切り抱き寄せた。
「ーーーーすまなかった。」
「え?えー?な、なんなの?私は全然ーーーー。照れるなぁーー。」
「俺は美由紀を幸せにできなかったーーーー。」
彼女は俯いてもいない、真っ直ぐ前を見詰めていた。
「色んな、カップルもいるもん。私は幸せだったよ。初恋だもん。初恋の人に全て捧げられたから、それはそれでいいの。納得した人生だったよ。」
美由紀は和真の肩に顔を寄せた。二人は新宿中央公園から若松町を抜けて北新宿の街並みへと続く小路へと入っていった。
この辺りも変わった。簡易宿泊所が多かった場所も鉄筋のマンション群が連なっている。
この都営大江戸線「東新宿駅」と呼ばれるこの地域も随分と変わった。年齢層が急激に低年齢化したのだ。
日本人のファミリー層が増えた。それと何よりコンビニ等、サービス業で働く外国人が増えた。増えたと言うより、日本人に取って代わったに近い。以前は浄水場だった都庁近辺も色々な顔に変貌した。
2回目のオリンピックは和真は美由紀と2人で見る事が出来た。
美由紀と籍を入れた。20歳の時だ。今までの和真の人生のケジメとして。まだ、結婚式は挙げていなかった。
「コロナが一段落したらさ、沖縄に戻るか?」
「そんな、できない約束はナシね。カズ君。アナタは東京でしか生きて行けないし、私、沖縄にはコロナ前に一度、帰ってるじゃない?大丈夫よ。親に最後のお別れはしてきた。私の人生、そんな感じ・・・いいの私は。カズ君を支える。アナタと生きるの。それで、充分、幸せ。」
二人はいつも行く深夜営業のスーパーに入っていった。
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