選ばれしヒト①

1/2
前へ
/86ページ
次へ

選ばれしヒト①

怒られた。バンドのメンツ全員に総じて和真と美由紀に少しは自重しろ!我慢しろ! そう言う事だ。 我慢できないから、今まで、来れなかったんじゃんね。2ヶ月以上。 バンドのメンバーは小姑か!舅か!和真は美由紀に軽く舌を出した。悪いと思ってないらしい。 後からキレ気味に、和真は聞いていたが美由紀は終始、恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めて、俯いていただけだった。 「分かった!分かったから!」 と、最後は和真がメンバーの言葉を遮ってしまった。美由紀はとうとう、顔を両手で覆って泣き出してしまった。 話はここまで、比嘉っちが2人にカセットテープを渡した。両面で60分の安物テープだった。 「とりあえず、麻里子もベースで戻ってきた。結夏は残念だけど、辞めてもらった。バンドの形にはなってると思う。オレたちの演奏したものがオケで入ってる。後はボーカルとキーボードを被せるだけだ。よろぴくー」 という事で今日はお開きとなった。 「いいじゃんか!好きな事やってて!」 和真は憤った。 「とりあえず、私達の居場所はあるんだから、いいじゃない?」 カサッ! 「?」 和真が突っ込んだ右ポケットに何かが触れた。 カサッ! 「・・・どうしたの?」 「さっき、俺、ガム噛んでたっけ?ポケットにゴミがある。」 「ガムはーーー。噛んでなかったと思うけど。チョコは私があげたよ。」 「あ、そっちね。なるほど、なるほど。」 和真は人目も憚らず、美由紀の肩に腕を回した。 「今日は何となく嫌。練習したいし。それにーーーーーーー。」 「それに?」 「いつでもいいから、カズ君に付いて来て欲しい所があるの。」 「新しくて綺麗なラブホとかいいよねー!」 美由紀が寂しそうに首を左右に振って、一言。 「産婦人科に行って欲しいの・・・できたかも。」 「え?マジか?」 和真は混乱した。家に一人で帰って、紙を漁ったら、麻里子の可愛らしい文字で、家の電話番号と「待ってるから!」というメモが見つかった。 和真は更に混乱した。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加