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選ばれしヒト①
怒られた。バンドのメンツ全員に総じて和真と美由紀に少しは自重しろ!我慢しろ!
そう言う事だ。
我慢できないから、今まで、来れなかったんじゃんね。2ヶ月以上。
バンドのメンバーは小姑か!舅か!和真は美由紀に軽く舌を出した。悪いと思ってないらしい。
後からキレ気味に、和真は聞いていたが美由紀は終始、恥ずかしそうに頬を真っ赤に染めて、俯いていただけだった。
「分かった!分かったから!」
と、最後は和真がメンバーの言葉を遮ってしまった。美由紀はとうとう、顔を両手で覆って泣き出してしまった。
話はここまで、比嘉っちが2人にカセットテープを渡した。両面で60分の安物テープだった。
「とりあえず、麻里子もベースで戻ってきた。結夏は残念だけど、辞めてもらった。バンドの形にはなってると思う。オレたちの演奏したものがオケで入ってる。後はボーカルとキーボードを被せるだけだ。よろぴくー」
という事で今日はお開きとなった。
「いいじゃんか!好きな事やってて!」
和真は憤った。
「とりあえず、私達の居場所はあるんだから、いいじゃない?」
カサッ!
「?」
和真が突っ込んだ右ポケットに何かが触れた。
カサッ!
「・・・どうしたの?」
「さっき、俺、ガム噛んでたっけ?ポケットにゴミがある。」
「ガムはーーー。噛んでなかったと思うけど。チョコは私があげたよ。」
「あ、そっちね。なるほど、なるほど。」
和真は人目も憚らず、美由紀の肩に腕を回した。
「今日は何となく嫌。練習したいし。それにーーーーーーー。」
「それに?」
「いつでもいいから、カズ君に付いて来て欲しい所があるの。」
「新しくて綺麗なラブホとかいいよねー!」
美由紀が寂しそうに首を左右に振って、一言。
「産婦人科に行って欲しいの・・・できたかも。」
「え?マジか?」
和真は混乱した。家に一人で帰って、紙を漁ったら、麻里子の可愛らしい文字で、家の電話番号と「待ってるから!」というメモが見つかった。
和真は更に混乱した。
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