東京・新宿・歌舞伎町⑤

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東京・新宿・歌舞伎町⑤

「5月だから暖かいと思ったけど、夜は冷え込むな。」 美由紀が静かに頷いた。 「季節は違うけど、千晶(ちあき)を身篭ったのが分かったのもこんな夜だった。外も少し、薄ら寒くてね。アナタ、ずっと私の傍にいてくれた・・・嬉しかったの。何よりも」 「そりゃ、そうだ。普通、一緒にいるだろう?こんなにも俺との子供を欲している。女の子が傍にいるんだ。そりゃ、一緒にいるよ。」 「そのカッコいい男の子は、 麻里子(まりこ)と愛し合ってた・・・」 「昔の事だよ・・・どうかしてたんだ。俺も。16歳で・・・」 「アハハ!昔の事にしちゃったんだ。こっちは大変だったのよ。本気(マジ)で」 美由紀は笑っている。聖母のように微笑んでいる。彼女にかかれば、和真も子供のようなものだ。 「だからって、あれから直ぐ、俺の前から姿を消したのか?」 和真はムキになった。 「そうじゃないんだなぁ・・・子供がカズくんとの子だったから、居なくなったの。」 美由紀は2度、3度首を振った。 「え?」 和真の身体が一瞬、止まった。 「でも、千晶(ちあき)は私とアナタの為に産まれて来てくれたの。私とカズくんは千晶に選ばれたの。それだけで幸せなの。」 微笑んで美由紀は和真をしっかり、真正面からみた。
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