16人が本棚に入れています
本棚に追加
東京・新宿・歌舞伎町⑤
「5月だから暖かいと思ったけど、夜は冷え込むな。」
美由紀が静かに頷いた。
「季節は違うけど、千晶を身篭ったのが分かったのもこんな夜だった。外も少し、薄ら寒くてね。アナタ、ずっと私の傍にいてくれた・・・嬉しかったの。何よりも」
「そりゃ、そうだ。普通、一緒にいるだろう?こんなにも俺との子供を欲している。女の子が傍にいるんだ。そりゃ、一緒にいるよ。」
「そのカッコいい男の子は、 麻里子と愛し合ってた・・・」
「昔の事だよ・・・どうかしてたんだ。俺も。16歳で・・・」
「アハハ!昔の事にしちゃったんだ。こっちは大変だったのよ。本気で」
美由紀は笑っている。聖母のように微笑んでいる。彼女にかかれば、和真も子供のようなものだ。
「だからって、あれから直ぐ、俺の前から姿を消したのか?」
和真はムキになった。
「そうじゃないんだなぁ・・・子供がカズくんとの子だったから、居なくなったの。」
美由紀は2度、3度首を振った。
「え?」
和真の身体が一瞬、止まった。
「でも、千晶は私とアナタの為に産まれて来てくれたの。私とカズくんは千晶に選ばれたの。それだけで幸せなの。」
微笑んで美由紀は和真をしっかり、真正面からみた。
最初のコメントを投稿しよう!