briliant shadow①

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briliant shadow①

高校のパーティの観客は毎年、満杯になる。 学園祭の後夜祭で歌えるのは6組。持ち時間30分程度、演奏時間と準備の時間があるから、多くて5曲。下手すりゃ3曲しか歌えない。 校内でトップ6に入らないと演奏させて貰えない、公平という名の怪しい選考が入る。 とにかく、バンド名から決めなくてはならなかった。『Sea.dog』は桜庭結夏の色が付きすぎているとバンドメンバーは感じていた。 『遅い!』和真は時計を観ていた。 昨日、和真は美由紀の両親に土下座をした。子供を産ませて欲しい。高校も辞めて働く、美由紀に不安な気持ちにはさせない。子供を産んで欲しいと彼女の両親に懇願した。先に2人の事情を知った和真の父母も頭を下げた。 美由紀の両親は一晩、考えさせてくれ。と言った。彼女の両親は美由紀が和真と何をしているか既に推測で知っていたが、実際にできてしまうと押し黙って考え込んでしまった。 次の日、美由紀は学校に来なかった。気付いたのは学校に行って出席を取ってからだった。2人が在籍する。一年二組では付き合っていることは公然の秘密になっていた。 時々、美由紀は学校に来ないこともあったがバンド練習には必ず来ていた。しかし、今日は来ていない。まさか!居ないなんて・・・ バンドを投げ出して、彼女の両親にまた、今日、頭を下げに行きたいとも思った。しかし、それは美由紀が許さないだろう。 小一時間程、練習したが、和真自身がうわの空で、音程、ズレズレで全く身につかない。 今日は早めにあがらせて貰うことにした。 帰路、バスに乗っても彼は落ち着かなかった。美由紀を守りたい。子供をまもりたい。こんな切ない気持ちになったのは初めてだ。辛い、本当に辛い。 だが、前を向いて立ち上がらなくてはならない。美由紀の為、生まれてくる子供の為。 絶対に逃げない。 隣家の美由紀の家に着く頃にはとっぷりと日が暮れてきた。 覚悟を決め、仲間と表札が出ている家の呼び鈴を鳴らした。 しかし、待てど暮らせど、美由紀の家から人影が動くことはなかった。
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