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brilliant shadow ②
和真は自室で電気も付けず項垂れていた。妊娠がはっきりと分かったのが一昨日、妊娠8週目だった。昨日、美由紀の家にきちんと伝えた。今日、美由紀がいるはずの仲間家の家の灯りは消えたままだった。
「和真、入るぞ。」
父の声がした。仕事から帰ってきたらしい。
扉が開かれ彼の父親が入ってきた。
「仲間さんから連絡があった。」
和真の身体が父の方を向き直った。父が続けた。
「仲間さん家はしばらく、帰って来ないそうだ。17歳の娘が妊娠を受け止め切れないでいる様子だとも言っていた。私は仲間さんに何かできる事はないか聞いた。」
父は一呼吸、置いてから口を開いた。一言。
「「探さないで欲しい」と。お父さんが言っていた。その気持ちも分かる。」
「探さないでって?」
「今日の午前中に引っ越したと言っていた。残った荷物は業者に任せるそうだ。」
「そ、そんな・・・オヤジ!なんでだよ!美由紀はどうなるんだよ。父親がいねぇんだぞ!産むんだろう?」
「それは、分からんよ。お父さんは美由紀ちゃんに任せるそうだ。産んだ場合の戸籍はお母さんが産んだことにして、仲間家の子供として育てるとも言っていた。」
和真は黙った。
「お前がいいと言うなら、探偵でも雇うか個人的に戸籍を取り寄せる事もできるが・・・」
「父さん、どんな手でも使ってほしい。頼む、美由紀に、会いたい。」
「さっき、母さんと話をした。美由紀ちゃんとお前が20歳になって責任の取れる歳になったら考えようと言うことになった。彼方のお父さんにもそう言って、納得してもらった。」
「父さん!今じゃダメなのか?美由紀のいない生活なんかあり得ない。」
「和真、大人になれ!美由紀ちゃんを守れる男になれ。20歳までに必ず。」
和真はしばらく父の顔を見上げていたが、意を結したように、大きく二度、頷いた。
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