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Okinawa in may ②
東南アジアで産まれた台風の子供達は熱せられた沖縄近海で発達する。
灼熱の海水温は風と雨と湿度をかなり含んだ1000パスカル以下の気圧の台風となって、うねりを上げて沖縄へと蛇蝎のごとくやってくる。
今日、5月2日、フィリピン近海で台風4号が産まれた。
その影響が全く出ていない空の下、和真は沖縄運輸のバスに乗って、那覇市内の整形外科にいた。足の怪我の定期検診である。
「あ、随分、よくなってるねぇ。レントゲンを撮らなくてもよく分かる。」
「先生、本当っすか?痛みは随分、引いたんすけど、動かすと鈍痛があって。って。レントゲン取らないんすか?」
「私ほどの名医になると、触るだけで全てが分かるのだ!ハンドパワー」
「はいはい、先生、マジで医師免許もってるのるの?そんなことやってると、患者がこなくなるっしょ?」
「私が言うんだから間違いない!後、全治2週間!言うことを聞きなさい!」
和真は少し考えた。
「先生、柔道が出来るまで、後、2週間って言うこと?例えばさ、歌を歌えるのはいつになるんだ?」
「そう言う事だ、柔道まで、後、2週間だ!歌?カラオケにでも行くのか?ヒトカラはいい何と言ってもストレス発散にもってこいだ!今から行ってきなさい。充分実力が出せると思うぞ。100点も狙えるかもな。」
「いや、カラオケじゃぁ、ないんだなぁ・・・」
「村の合唱団にでも入るつもりか?全く、構わんよ。」
「もう、いいです!また来ます!」
和真は整形外科を出た。遠くで雷鳴が響いてる。沖縄の梅雨近しだ。今日は美由紀は学校に来ていなかった。恐らく、Pという音楽スタジオに篭って練習しているはず、彼女のパートはキーボード。
子供の頃からピアノをやっていたが、高校に入ってからキーボードに転向。メロディラインのキーを担っている。
美由紀がバンドを初めてから、柔道をやる和真とは少し距離ができたように感じる。
小学校から同じクラス、そして中学も高校1年まで何故か同じクラス。
彼女はいつでも自分の傍にいると思っていたし、美由紀も同じ気持ちだと思っていた。
しかし、互いに距離を感じる。向かう生きる方向が違ってきたように感じる。
柔道と音楽。見るものが違う。同じ夢を見ることも無い。
和真と美由紀は別々の道を歩み始めているのかも知れなかった。
それを確かめにスタジオPに行くのも悪くない。美由紀だって、いつまでも和真の後ろだけを追いかけて行く臆病な少女であるはずがなかった。
夢が違い、2人の別れは近いのだろうか?
近場のバス停でバスに乗った。相変わらず、エアコンの音だけが煩い、バスだ。
そして、Pにほど近いバス停で降りた。
和真は確かめたかった。美由紀の成長を。
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