Tokyo in 1987①

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Tokyo in 1987①

那覇空港で和真と比嘉っちは合流した。藤川も一緒だった。当時はまだ、那覇国際通り直通のモノレールは走っておらず、通称『銀バス』が国際通りと空港を結ぶ足だった。藤川が、 「今回の東京行きは少し、滞在期間が長くなるかも知れない。親御さんたちは私が説得して置く、それでも行くのか行かないのかハッキリして欲しい。行くと決めたのならある程度、覚悟をして欲しい。」と、言った。 何の覚悟かは教えてはくれなかったが、大の大人の藤川が神妙な顔つきだった。比嘉っちは一もなく二もなく東京に行くと言った。和真も気持ちは一緒だった。 藤川が煙草を吸いに二人と離れた所を観て、比嘉っちが和真を呼んで、ヒソヒソ話を始めた。 「麻里子から連絡があった。アイツと結夏は呼ばれなかったらしい。よく分からない。さっき、藤川が東京へは長い滞在になると言っていた。何故、メンバーの女子二人を呼ばないんだ?俺が思うにアイツら二人はクビだ。」 「えっ・・・」 「藤川にさっき、カマかけたんだよ。俺は麻里子とできている。彼女にしたままデビューさせたら不味いんじゃねぇの?って。芸能人は自分自身が商品だ。麻里子は掛け値なしに可愛いが俺の女だ。そいつをバンド内に留めておく理由が見つからねぇ。」 藤川の答えは曖昧だった。 「まぁ、いいんじゃないか?」とか何とか。アイツら大人は腐ってやがる。 「つまり、麻里子はシカトされて切られたって事か?」 「そうだ。藤川は長い滞在になるとか、抜かして居たが、それはあくまで、藤川の言うことを聴いているうちは東京に居れると言うことだ、奴に逆らうと、一気に沖縄に強制送還だ。そして、俺たちも終わる。」 「そんな馬鹿な!」 「俺は東京に居続けるぜ。どんな事があろうとお前と一緒に天下を取る。麻里子と結夏が切られた原因がただ、女で邪魔だったからだという事だとしても。」 比嘉っちは続けた。 「そして、俺たち二人は呼ばれた。まだ、タダで東京に行かせて貰えるだけ、商品価値があるって事務所の考え方があると思う。俺はお前と二人で天下を取る。藤川たちは俺たちの力と才能をむしゃぶりついて、実力の全てを吸い尽くすかも知れん。だがな。俺たちはそれに有り余る、力をこれから着けなくてはならん。カズ、覚悟を決めろ!ビックになろうぜ!オマエは美由紀が見つかるまで頑張るんだ。きっと見つかる。」 和真は大きく頷いた。大丈夫だ、腹は既に座っている。美由紀は二人でビッグになったら、逆に姿を見せる事がないかも知れないという予測もしたが、ビッグになれば、会える。少なくても影で俺たちを応援し、いつか姿を見せてくれるはずだと信じていた。 和真は比嘉っちと、藤川と共に、JAL555便、東京羽田行きのエアバスに乗って旅立った。
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