pool ①

1/1
前へ
/86ページ
次へ

pool ①

「杉山清貴&オメガトライブの『君のハートはマリンブルー』って曲は、僕の中ではプールの水なんですよ。海ではなく、プールです。』 真栄城和真は宙を舞うような視線で、ボーッと考え込んでいる。 「それ、どういう事?」 2年生のリーダー格の女生徒が言った。名は桜庭結夏(さくらば ゆうか)と名乗った。 「なんて言うかな?海の水って絶えず入れ代わるじゃんね。プールの水ってさ。外にある程度、循環はするけど、そのままの状況で透明感のある美しさを常に保たなきゃいけない。塩化水素に洗われ、真水を少しずつ足されるけど、いつでも綺麗と客に思われないと相手にされない。人工的な美と偽りの美が絡み合ってるような気がするんだよね。『君のハートはマリンブルー』なんて、楽曲的にも作り物っぽくていけない。」 「それは私も感じるかな?『君のハートはマリンブルー』は計算され尽くされてる感はある。私の言葉で言うなら、女性の好きな音を集めまくったらこう言う音源になりました。みたいな。そんな感じ。計算されてる。とてもじゃないけど、24、25のお兄ちゃん達が出せる音じゃないとは思った。」 「そそ、何かね。杉山清貴さんは歌わされてる感が、演奏しているオメガトライブはやらされてる感があるんだよねーー。今、みんなが演奏してる『君のハートはマリンブルー』は自由度が段違いにあるなぁ。」 「キーボードを叩いていても感じるけど、何だかオメガトライブの他の曲と比べても特に変なの。なんて言うか、完璧に化粧をすると音ってこんなになるんだなぁっては思う。変な言い方をすれば、気持ちが悪い曲なの。化粧が完璧過ぎて。杉山清貴&オメガトライブが短命で解散した理由っていうのもこんな、雁字搦めになった楽曲をいやいや、やらされてたからかなぁ?とか、思ったり。」 「新しいんだけど、何だか悲しいんだよね。この曲。美由紀が言ったのもそれ、ビンゴ。気持ち悪いんだ。作り物すぎて。」 「じゃあ、『君のハートはマリンブルー』の演奏は止めたいの?コピーとしては完璧よ。」 「俺、思うんだ。この曲を若返らせたいと思う。」 「若返らせる?」 「「Paddring to you!」って曲あるじゃん、あんな感じにするんだよ。少し、スピード感を持たせて、全体的に走らせて、派手なコードチェンジしてみたいね。おもしれ〜と思うんだよなぁ。味付けは、桜庭先輩と美由紀を中心にやってもらってさ。俺、後、2週間したら柔道やんなきゃ行けないからさ。新しい、マリンブルーが聞きたいなぁ。」 「・・・」 「ど、どうした?美由紀?顔が真っ赤だぞ!?」 「カズ君、あんまりカッコイイこと言わないの・・・ドキドキして、お股がモゾモゾしてきちゃった。・・・」 「えっ?美由紀、お前、何言って・・・」 「アタシも・・・少し、濡れ・・・」 「さ!桜庭先輩!」 女子二人は、顔を真っ赤にして照れた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加