変わらないもの

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「うちの大学ってサークル多いけどあんまりパッとするものないね」  大学近くのファストフード店で七海がフライドポテトを摘みながら呟いた。 「だね。でも、何かには入りたいんだよね」 「それは私もだよ」  七海は桔花の言葉に頷くと、「話変わるんだけどさ」と言ってリンゴジュースを1口飲んだ。 「桔花って彼氏とかいるの?」 「全然」  そう言って桔花が首を横に振ると、七海は次の質問を投げかけてきた。 「じゃあ、初恋は?」  そう言われて桔花の脳裏に自分と同じく植物好きだった同級生の顔が蘇る。転校する前に桔梗の造花を桔花に渡してくれた彼の顔を桔花は今でもはっきりと覚えていた。  それと同時に桔梗の花言葉を思い出し顔の体温が一気にあがる。目の前にいる七海には気づかれてないようだけど。  そんなことを思いながら桔花はボソボソと声を出した。 「…小2の時」 「へー、相手はどんな子?」 「植物博士」 「植物博士?ってことは、植物にめっちゃ詳しい男子だったってこと?」 「うん」  そう言ってこくりと頷いた桔花に七海は「いいなー」と羨ましそうに声をあげた。 「七海は彼氏いないの?」  桔花が聞くと、七海は「一応ね」とどこか冷めた様子で短い返事を返した。  そんな彼女の態度に桔花は少しひっかかるものを感じたけど、彼氏がいることはやっぱり羨ましかった。これくらいの歳になれば桔花に限らず恋愛に憧れる女子は多いと思う。 「いいなぁ」  正直に自分の気持ちを言った桔花に対し七海は首を横に振った。 「全然」 「えー彼氏いるのいいじゃん。七海の彼氏はどんな人なの?」 「高校の時通ってた塾で仲良くなった同い年でヤンチャ系」 「ヤンチャ系なの?」  桔花が言い返すと、七海は「そうそう」と言って頷いた。 「なのにめっちゃ頭良いの。正直言って高校の時はそんな彼氏にすごいムカついてた」 「わー、なんかドラマに出てきそう」  桔花がそう言うと七海は「だよね」と言って笑った。 「おまけに病院とか介護施設でボランティアまでしてたらしい。なんだろ、少女漫画に出てきそうな男子って感じ」 「そんな気はする」  そう返して桔花はチーズハンバーガーを一口齧った。  七海はあんなふうに言っているけど、きっと彼氏さんのことが好きで好きでたまらないんだろうなと思う。桔花だってもう10年以上会っていない初恋の人のことが今でも大好きだ。 「今彼氏さんも大学生なの?」 「うん。地元の私立大学の看護学生」  七海はやっぱりどこか冷めた表情でそう答えると少し声のトーンを下げて桔花に言った。 「でも、私彼氏と別れようと思ってるんだよね」 「え、なんで?」 「まだ数週間しか経ってないけど遠距離に疲れちゃって」  七海はそう言うと、リンゴジュースを飲んだ。
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