変わらないもの

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「そうなの?」 「うん。遠距離だから毎日メッセージ送らなきゃとかGWの予定合わせなきゃとか考えることが多くてめんどくくなってきたんだよね」 「そっか」  桔花はそう言ってまたハンバーガーを齧った。 「高校の時はすごく好きだったけど、遠距離になった瞬間覚めったっていうか。向こうがどう思ってるかは分からないけどね」  七海はそう言うと「私の彼氏の話はここまでにして」と言って勝手に話を終わらせた。恋バナが好きな桔花はまだもう少し彼女の話を聞きたかったけど、七海はあまり話したくなさそうに見えたからそれ以上は何も聞かなかった。 「サークルどうする?」 「うーん、どうしよ」  桔花がそう返すと、七海は「ぴったりなものってなかなかないし難しいよねー」と独り言を呟くように言うと続けた。 「植物系のサークルとかあれば良いのにね」  七海の言葉に桔花は頷いた。本当にそんなサークルがあれば良いのにな、と思う。  ボランティアで花を植えたり押し花を作ったり花言葉を調べて文化祭で展示会をしたり___。  植物1つで楽しめることはたくさんあるのにな、と思いながら2人でそれぞれのリンゴジュースを吸っていると同い年くらいの男の子が桔花達にに寄ってきた。  シンプルなTシャツにパーカーを着たラフな格好をした彼を見て桔花は「どこかで見たことある顔だな」と思う。背が低い訳じゃないけど、幼さそうで可愛い系という文字がぴったりの彼は桔花と七海を見てニコッと笑った。 「K大の農学部の1年生ですか?」 「そうですけど…」  七海が不審そうな目で返すと、彼は「やっぱり」と嬉しそうに言った。 「僕もそうなんです。今同じ1年の友達…って言っても男子3人なんですけど、植物系のサークルをつくろうって話をしてて」 「植物系のサークル!?」  桔花と七海の声が見事に重なった。2人が求めていたものだからだ。 「はい、と言ってもまだ活動内容は決めてないんですけど」  彼はそう言って苦笑いを浮かべると続けた。 「一応僕達としては、ボランティアで花を植えたり食べられる植物の料理を作ったりしたいなって考えてるんです。でも、ここに女子が入ったら女子ならではの意見…例えば押し花とか花言葉とかも入ってきて活動の幅も広があるかなーと思って」 「それすごく楽しそうですね」  真っ先にそう答えたのは、七海だった。そして、そんな七海に「桔花もそう思うでしょ?」と言われて桔花も頷いた。  すごく楽しそう、と心から思えた。これなら4年間楽しく過ごせるかもしれない。  そんな自分達の反応を見て男の子は嬉しそうに笑った。 「良かった。5人なら大学の公認サークルになれるんで嬉しいです」  男の子はそう言ったのと同時に彼の後ろで彼の友達らしき男の子が「おーい」と彼を呼ぶ姿が見えた。 「友達近くにいるんで紹介しますね。あ、僕は柚に貴族の貴で早坂柚貴って言います」  柚貴。その名前を聞いて桔花はハッとなる。初恋のあの子と同じ名前だ。  そんな彼の名前を聞いて桔花は思わず自己紹介をしようとした七海より先に声をあげた。 「私は桔梗の桔に花で日下桔花です。」  桔花の名前を聞いて彼の目が見開いた。でも、彼はすぐに笑顔になってこう言った。 「久しぶりだね、桔花ちゃん」  桔花の植物博士だった彼はあの頃と何1つ変わっていなかった_____。
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