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「……君に、逢いたかった」
「ついさっきまで、一緒にいたじゃないですか」
「いいんだ、いいんだよ」
「……研朗さん、今日はなんだか変ですね。貴方が泣くなんて。ほら、いつもみたいに僕に笑って」
研朗は友人に慰められてもなお、腕を解こうとしなかった。自分が望んでいたから、彼が現れたのだ。研朗は漸くそれに気付く。
顔料の香りが仄かに漂う。研朗はもう二度と忘れないよう、大切な人の匂いを思いきり吸い込んだ。
いつも貴方の顔を思い浮かべて待っていると、本当に貴方は僕の許へやってくる。まるで予期していたみたいに……。
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