実況者、ユメ

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実況者、ユメ

 人には、多かれ少なかれ、無視できないくらいの悪意というものがある。そしてその悪意を、世の中の不特定多数の人達にぶつけようとするような、そんな困った人というのがこの世には決して少なくない。  例えば、理不尽なくらいに難しいゲームを作ってしまうような人。たちの悪いことにいい塩梅にラインを突いてくるおかげで、「無理だ」なんて言い訳も全く通用しない。  しかし、そんな理不尽がなんぼのもんじゃいと、真正面から向き合って攻略できるようになると、これがほんとに凄く楽しい。このスカッとする感覚のために、ゲームをやっていると言っても過言ではないと思う。  だから今日も、ボク達は進み続けるのだ。自分自身の屍を超えながら。それが、ハードコアゲーマー。  ボクの名前は水杮(みけら) 夢見(ゆめみ)、「いつまでも少年の心を持ち続ける」がモットーのゲーム実況系女子。水杮の「杮」は「(かき)」じゃなくて「(こけら)」。とは言っても、実況者の「ユメ」としての名前が世に知れ渡ってて、昔から皆、後輩も含めてこう呼ぶから、この苗字のことはどうでもいいかも。  ボクは普段から、ほぼ毎日、動画投稿サイトでゲーム実況配信をやっている。昔からゲームがうまい自覚があったから、それを見せつけられるプレイを配信しているんだ。  主にアクションゲームのゲーム開始からエンディングまでの時間を競うタイムアタック、ノーダメージチャレンジとかをやっていて……一番人気があるのが、特殊条件での、高難度チャレンジ。「縛りプレイ」とか、そんな風に呼ばれるプレイをしている。  今から話すのは、その中でも一番印象に残っている回のこと。
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