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桐葉さんの言い回しは、社長にその話の出所を言わせようとしているように思う。
そしてたぶん、その相手が誰なのかを確信しているようにも聞こえる。
「……いや、何もないなら良いんだ」
それ以上は突っ込んで聞いて欲しくないのか、自分から振ってきた割にすぐに逃げ越しに名言を避けた。
そんな社長の姿に対し、桐葉さんは嫌悪感を抱いた表情を隠す様子もなく表に出しているのですぐにわかる。イラッとしているんだろうなと。
彼の事だから『仕事の話で呼び出したのかと思えば、くだらない事を聞く為に時間を割くな』とでも思っているのかもしれない。
「10月、11月は結婚式のピークの時期だ。お客様は他の式場と比較しながら決める。他社との差別化も大事になってくる。それには君達が常に向上心を持って新たなプランを考えていってもらわないといけない。絶好の稼ぎどきだ。1人でも逃してはならない。非常に忙しくなるだろうからしっかりしたまえ」
コホンと咳払いをし今度は何を言い出すかと思えば・・返す言葉が見つからなく気まずくなったのか知らないけど、急に説教じみた言い分でプレッシャーを掛けてくる始末に、もはや呆れてしまう。
『話は以上だ』と早々と切り上げて部屋を後にする社長に頭を下げるも、隣では桐葉さんはまるで能面のように“無”の状態で座っている。
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