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1章:初めましてが最悪だった。
「瑠歌さん、こっちはどうします?」
「そうだね、……うん、ここにも花が欲しいかな」
左手に手帳を持ち、100人が収容出来る大会場を右へ左へと指示を飛ばすと、皺の無い黒のパンツスーツに動きやすいパンプスで忙しく行き交う20代の女性社員達は、テーブルや高砂席を器用に飾りつけていく。
ここ”オルコス・ド・エフティヒア”は『幸せを一緒に味わう空間』をコンセプトに、恋人達が一生を誓いあい”夫婦”としてのこれからを祝福する、ゲストハウス型の結婚式場。
そしてそこで働く私、棗 瑠歌は、ウェディングプランナーのマネージャーとして多くの新郎新婦達のサポートをするため奮闘。『お客様を第一に』をモットーに基本の身だしなみには気を付けて、ナチュラルメイクにラベンダーグレージュ色のセミロングパーマを1つに束ね、信頼あるよう誠実な対応を心掛けている。
……なんて真面目な事を言ってはみたものの、私自身は来月30歳になるのに、つい昨日彼氏にフラれて結婚が遠のいてしまったわけで。
「瑠歌さん、14時から打ち合わせが入っているんですがその前に困った事があって―――」
「了解。ここがもう少しで終わるからちょっと待ってね、すぐ話聞く」
後輩のサポートもしながら昨日の出来事を1秒でも早く忘れようと、気持ちばかりが焦っている。
正直まだ、現実味を帯びていないんだ。
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