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昼休みの1時間で簡単に答えが出るはずもなく、余計モヤモヤしたまま会社に戻る事に。
***
「只今戻りましたー……」
いつものようにスタッフ達に声を掛けながら事務所に戻ると、みんなその場で背筋を伸ばして起立し、同じ方向へと体が向けながら時折こちらをチラチラ気にする様子から何やら不穏な空気を感じ取った。
全員が集めた視線の先にいたのは、そう──
「社長!?」
なぜか突然、社長が訪問。 隣に立つ桐葉さんと共に険しい表情を浮かべている。
以前にも1度登場したこの社長(65歳♂)は、普段はほとんど現場へは現れず大概の用件は電話で済ます事が多い。しかし直接足を運んでまで伝える要件は、高確率で悪い報告。
だから今日も、たぶん・・・
「棗くん、話がある。桐葉くんと一緒に別室に来なさい」
元々あまり笑わない社長(ブライダル業界のトップとしてどうかと思うが)の表情が、今日はより一層厳しく見える。
私と桐葉さんが呼び出される事態に思い当たる節がないけど、何をしでかしたんだろう。桐葉さんも険しい表情を崩さないままだし、嫌な予感しかない緊張感に恐怖を覚えながら、社長の後を追うように私達は誰もいない打ち合わせルームへと移動した。
『座りなさい』と通され、テーブルを挟んで社長の前に桐葉さんと椅子に腰掛ける。
そして前置きなく社長がある事を発した。
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