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「君達、職場で何をしたんだ」
その一言に、私は自分の耳を疑った。そして隣に座る桐葉さんもまた、さっきまでの険しい表情から一変、珍しく目を見開いて驚いている。そう、まさに2人揃って絶句状態。
社長の言う“ここで何をしたんだ”って意味が何を指しているかなんて、すぐにピンとくる。つい今朝、その話題になったばかりなのだから。社長自らわざわざ会社に出向き、私達2人を呼び出して何事かと思えばまさかその話の為だなんて。
それにしても情報が社長の耳に入るのが早すぎ。どうなっているの?
「答えなさい。ここで何をしていたんだ」
私も桐葉さんも口を開かないから、痺れを切らした社長は更に畳み掛けに入る。
「まさか本当に君達……」
「いえ、私達はっ──」
「社長、何か誤解されているですが」
慌てて否定の言葉を口にしようとすると、すかさず桐葉さんが冷静なトーンで横から割って入る。
「“ここで何を”という意味は分かりかねますが、私と棗さんは会社の上司と部下であり、仕事に関する件でここで打ち合わせをする事は多々あります。しかしながら社長の仰る意味がどうにも……。職場で何をされていたとお思いですか?」
まさか逆に質問で返されるとは思っていなかったからか、社長は桐葉さんの言葉に一瞬眉を動かし戸惑いを見せた。
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