1章:初めましてが最悪だった。

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 けれど彼はそれ以上頑なに話そうとせず、複雑に私を見つめたまま口を閉ざしている。  それで何となく察しがついてしまうのは、“女の勘”というものが働いているからなのかもしれない。  そしてその直感って、強ち間違ってない。 「もしかしてその相手って、私も知ってる人だったりして」  遠まわしに聞き出そうとズルい方法で問い掛けると、沈黙を続ける彼が一瞬ピクリと眉を動かして反応を示した。私はそれを見逃せるはずがない。だってそれがつまりだから。 「だから言いたくないわけか……」  思わず口に出してしまったのは無意識。そんな漫画みたいな事ってあるんだな……って、かなりガッカリしているのが正直なところで。そして同時に、もう1つ疑問が残る。 「いつから? その人を好きになったのは」  答えなんて聞けば聞く程ショックが重なるだけなのに、気になって聞きたくなるのはフラれる側の複雑な心情だと思う。  別れを切り出すこの男がこんな私の気持ちを理解出来るとは到底思えなくて、馬鹿正直にちゃんと応えてくれる。 「……先月の飲み会、から」  やはり答えづらいらしく、この男にしてはハキハキしない。って、ん? 待って。飲み会って今言った? 「飲み会(そこ)で急接近して仲良くなったんだ」  曖昧に答える彼とは裏腹に、私は嫌味ったらしい直球を投げつけた。    
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