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「...大尉、本日はよろしくお願い致します。任務の詳細についてですが、私なりに今回の護衛のフォーメーションを検討してきました。事前に認識を合わせておきたいのですが、この後...」
「...は、隊を率いる司令官気取りか?見苦しいぞ、コリンズ。上官へのアピールなら、私のいない所でやってくれ」
「...いえ、そんなつもりは...」
「それともあれか。ダグラス家の出である私に気に入られ、今後の昇進の礎にでもしようと画策しているのか。だとしたら無駄だ。私は魔族などを贔屓にしているお前と仲良くしてやる気は毛頭ない」
「...」
任務の当日。
顔を合わせればノイへの敵対心が沸々と湧き上がり、言われてもいない言葉に対して溢れるように悪態が口を吐く。
そんなショーンに対してノイはどこか驚いたように目を見開くが、すぐに「そうですか」と短く相槌を打ち、今回任務を共にするであろう魔族の軍人の元へと踵を返した。
「...は、そうだ。それでいい。私に媚びなど売るな、虫唾が走る...」
ノイ・コリンズは、異例の昇進スピードを誇っているショーンを追い上げる速度で、若くして中尉の地位を手に入れている。
それもこれも、上官へ媚びへつらい、自分の実力以外で裏で手を回しているに違いない。
先日部下である魔族を気に掛けるようなアクションを起こしたのだって、きっと正義感からくるものなどではなく、ただの点数稼ぎに過ぎなかったのだろう。
そう思えばノイに対する敵対心は幾分かマシになり、ショーンは自分に言い聞かせるように「大丈夫だ」と頭の中で何度もその言葉を繰り返した。
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