因縁の交錯

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燦々と日差しを振り下ろしていた太陽も今は西に傾き、セントラルの街はキラキラとした明かりがどこからともなく灯り始める。 そんな中ショーンは、セントラル第1区の街を取り囲むようにして設置されている壁に用意された裏門に足を向けた。 そこに到着してみると、既に今回任務に共に就くこととなっている軍人の姿が見える。 その中にはノイの姿もあった。 「ルーカス、フィン氏は嫌煙家で有名らしい。今回は一服は無しだ、わかったな?」 「嫌だって言ったら?」 「...いい度胸だな。エルガさんに言いつけるぞ」 「うわ、それは勘弁してくださいよ中尉!エルガ怒ると怖いの知ってるでしょ」 部下である魔族と仲睦まじく会話を弾ませている様子に、ショーンは無意識に眉間に皺を寄せる。 その部下というのは、以前食堂でショーンが「忠告」をした蛇人族の軍人だ。 「...は、緊張感のかけらも無いな。それで任務が務まるのか」 「...っ...ダグラス...、」 「ああ、大尉。本日はよろしくお願い致します。任務には支障は来しませんので、心配は無用です」 「どうだか。実力の伴わない昇進というのは、任務を共にするこちらとしては不安材料にしかならない」 「...っ...!あんた、中尉になんてこと...」 「ルーカス、いいから。...ひとまず全員揃いましたので、任務の最終確認をしましょう。予定ではフィン氏もあと30分程度でここに到着するようですし」 皮肉を言われても意に留める様子もなく淡々と任務について話し出すノイに、ショーンはまた苛立ちを募らせる。 ショーンはノイに対して掌を突き出して制すると、冷たい声色で言葉を続けた。 「...今回の護衛なんて、上が権力者に媚を売りたいだけの言わば形骸的なもの。ここ最近は目立った抗争も起きてはいないし、危険分子も先日の騒動で軒並み今は牢屋の中。それを踏まえても綿密に計画を練りたいと言うなら、その手籠の部下と仲良くやっていろ。私は勝手にやらせてもらう」 「...しかし、いくら今が平穏だからといっていつ奇襲をかけられるかもわからない。油断は禁物です」 「口を慎め、コリンズ。これは上官命令だ。各自事前の資料にあった通りに動けばいいんだ。貴様らの仲間ごっこに付き合わされるのは御免だぞ」 ショーンは未だに反論しようとするノイに取り合うこともせず、それだけ言い捨ててノイ達に背を向ける。 背後ではルーカスが何がぶつぶつと呟いていたが、ショーンの耳にはノイの小さな溜息だけが残っていた。
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