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「おお、お前達か。私の命はお前達に掛かっている。くれぐれもよろしく頼むぞ」
「フィン様、お初にお目にかかります。統合軍セントラル第1区所属、大尉のショーン・ダグラスと申します。」
「...ダグラス?ほう、お前が例のダグラス家の次男坊か。なんだ、噂に聞いていたよりもしっかりしているな。まるで立派な軍人にしか見えないぞ!ガハハ」
「...ええ、私は軍人ですので...」
挨拶を交わしたのも早々に、やはり自身の名を出して次に出てくる話題は家柄のこと。
その後に続けられた言葉も、ショーンにとっては不服としか言いようがなく、無理やりに口端をあげて笑顔で取り繕った。
「それじゃあ行こうか。パーティーは明日、君の親父さんも来るのだから今夜はしっかりと休まなければな。長旅で疲れた、今日のホテルに案内してくれ」
「...はい、すぐに」
ショーンが応対している間も、背後ではノイとルーカスが周囲を警戒して目を光らせている。
何をそんなに「形骸的な任務」に躍起になることがあるのだろうか。
呆れながらも、ショーンは相変わらず隣で呑気に笑っている男を連れて宿を目指した。
◇◇◇
「おい、ダグラスくん」
「...はい、何でしょうか」
「いくら護衛とはいえ、魔族を私の視界に入るところには置いてほしく無い。部屋の前の護衛は君とあの男にお願いできないかね」
「...承知致しました。その通り対応させていただきます」
「うんうん、助かるよ。魔族なんかにはホテルの外の警備にでも当たらせておけ。何かあったら、真っ先に私の盾になってもらわなきゃならないからな。ガハハ」
宿に着き部屋へ案内したと同時に、ドリストはショーンにそう言いつけて部屋の中へとそそくさと姿を消していく。
溜息を吐きたくなるのを寸でのところで堪えて、ショーンは扉が閉まるまで腰を深く折ってその姿を見届けた。
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