因縁の交錯

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───.. 「...ルーカスを外に?街には夜勤の軍人が既に出ているでしょう。私達は部屋の前で警備に当たるのが妥当かと思いますが」 「...口答えするな。フィン氏から直々の申し出だぞ、無碍になどできない」 「何事も命にはかえられません。私達は軍人として最善の策を取るべきです」 「...っ...、」 苛立ちが募る。 何故、こうも融通が効かないのか。 ショーンは伏せていた顔を上げると、目の前で自身を迷いのない目で見据えているノイを鋭く睨みつける。 「いい加減にしろ、ノイ・コリンズ。...言っただろう、奇襲などされない。これは軍として形だけの任務なんだ。しがない平民の出のくせに、これ以上偉そうに私に意見するな」 「...」 ───私はお前に期待などしたことはない。それはこれから先も同じだ。 父親から掛けられた言葉が、呪いのように脳裏を巡る。 今まで劣等感に苛まれながらも、努力を怠ることなくこの地位まで駆け上がってきた。 そこに偽りなどない。悲観する言われもない。 ───きっとこの先、父上が私を認めてくださる日が来る。そう、必ず...─── 「...貴方は一体、何のために軍人になったのですか」 「...は?」 ショーンが己のことを回顧していた時に、唐突に放たれた疑念の滲む問い掛け。 いったい何故そんなことを尋ねるのか。 その意図も把握できないまま、ショーンは無意識に視線をノイから逸らした。 「...」 「...私はこの国の軍人です。任務に関しては手を抜くことはしません。それがたとえ上官の命令であったとしても」 「...っ...貴様...、」 「...ルーカス、配置に付け。今夜は夜通しの警備になる。気を抜くなよ」 「はい、中尉!」 ノイは何も答えられずに俯くショーンにそれだけ言って、興味を失ったとでも言わんばかりに背を向けて任務へと戻って行く。 ───..お前に、私の何がわかるというのか。 ショーンは眩しいまでに自身の信念を貫こうとするノイに対して、もどかしさと悔しさに唇を噛み締めながら、『名家』に生まれ落ちた自分自身の不遇を言い訳のように頭の中で繰り返した。
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