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「...それと、コリンズ。もう一つ、君に相談したい事がある」
「...相談したいこと?」
ショーンからの話も終わったのだろうと踏んでノイがその場から腰を上げようとした時、ショーンはそう言ってノイを呼び止める。
今まで一人で抱えてきた分、まだまだ話したい事があるんだろうと納得したノイは、芝生についていた手を退けて、再びショーンへと向き直った。
「...」
「...ショーン?」
「...今から話すことは、昨夜、私の父親とフィンが話していた内容を盗み聞いてしまったものなんだが...」
ショーンはそう前置きして、ごくりと唾を飲み表情をこわばらせる。
そして、意を決したように昨日聞いた話の内容をノイへと包み隠さず話してみせた。
───...
「...それはつまり、軍が民間企業と結託して何かしらの良からぬ企てをしていると...?」
「...ああ、話を聞く限り、私はそう受け取った」
「しかし、...」
「理解が追いつかないのもわかる。だが実際にアンダーソンが既に動き出していると言っていた。この件が事実なら、おそらく南部で今後何らかの動きがあるはずだ」
───何らかの動き。
それがわかる頃には、デイビッドの言っていた通り多くの犠牲者が出る可能性がある。
しかしそれも、軍によって揉み消され───
「...場所についての言及は?」
「いや、そこまでは話されていなかった。だから私はこれから父上が何をしようとしているのかを内密に調査しようと考えている。事が起きていない今であれば、まだ間に合うかもしれない」
「...」
ショーンはそれだけ言うと、口を一文字に結び、僅かに震える手を隠すように背後へと回す。
...何故この話を自分にしたのか。
それはきっと、ショーンが助けを求めているからだ。
それに今聞いた話は、一人で動くには規模が大きすぎる。
「...ショーン。俺にも手伝わせてくれ」
「...っ...、コリンズ、...しかし..」
「軍の悪事を聞いてそれを見逃すことなどできない。それに君は、俺を信頼してこの話をしてくれたんだろう」
「...それは、そうだが...。でもコリンズ、違うんだ。私は君を巻き込みたかったのではなく、私がこれからやろうとしていることをただ知っておいて欲しかっただけで...」
「...もう遅い。相手が悪かったな、諦めろ。そんな話を聞いて君一人に事の解決を任せるなんて、俺の性分じゃない」
ショーンはノイの言葉に驚いたように声を上げるが、それでもどこか安堵してしまう自分もいた。
きっと実際は、心のどこかでノイに頼りたかったのだろう。
一緒に戦おうと、言ってもらいたかったのだろう。
「...コリンズ..、」
「頼りたい時には、素直に助けて欲しいと言えばいい。俺はもう、君の友人だ。一人で抱え込ませるようなことはさせない」
「...、...ありがとう」
ノイからの心強い言葉に再びショーンは涙腺が緩むのを感じるが、今度ばかりは必死に堪える。
そして二人は、日の落ちた演習場の一角で、今後の動き方についてひたすらに話し合った。
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