168人が本棚に入れています
本棚に追加
あの後も演習風景の視察は滞りなく行われ、今は昼休憩となり演習場にはまばらに魔族たちが屯っているだけだ。
ショーンは街へ出ると言うレミノに付いて行ったため、今ここにはいない。
...ショーンの奴、確実に強くなっているな。
「おい、ノイ〜!今日こそ俺と飯食おうぜ、ほらほら早く食堂行くぞ!ここの肉すげぇ美味いんだよ!」
「...ガラフ。相変わらず飯の時になると元気だな」
「あったりまえよ。人間の三大欲求だぜ」
ガラフはいつものようににこにこと顔を綻ばせ、明るい表情のままノイの腕を掴みずんずんと先を進んでいく。
本当に、自分とは似ているところなんて何一つない男だ。
それでもこうして気を許すことができるのは、やはりガラフもまたこの世界を変えたいと本気で思い、腐ることなく信念を持っているからだろう。
「それにしてもさ、ダグラス中佐って意外とできる人なんだな。ノイも見ただろ、さっきのあの動き。負けたとはいえ、魔族相手に怯むことなく向かっていく姿、正直俺は痺れたね」
「ああ、そうだな」
「...は、それだけ?...つっても仕方ねぇか。ノイと中佐昔からばちばちだもんな」
ガラフの言葉に、ノイは困ったように笑みを浮かべるだけだ。
ガラフをなるべくなら巻き込みたくないと考え明かしていない関係性をどこかもどかしくも思う。
それでも先程目の当たりにしたショーンの勇姿は、本人の今までの努力の結果でしかない。
きっとこの先、今ひた隠しにしているその本質に気付く者も出てくるだろう。
「...ガラフ、俺たちも気合いを入れ直さなきゃな」
「お、いいねぇ。ライバルの活躍を見てやる気になってきたか!お前にならいくらでも付き合ってやんぜ」
「だったらそろそろ昇格試験を受けろ」
「...うわ、痛いとこ突いてくんなよ。まあそうだなぁ...そろそろ俺も本気出すか」
どこまで本気かわからぬその言葉にノイは苦笑いを浮かべ、自分は自分のやるべきことを全うしようと改めて決意した。
最初のコメントを投稿しよう!