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暫く二人で背中を向き合わせ束の間の食事を楽しんでいれば、ふいに背後でメイメイが動く気配がする。
気になってジャンロンが振り返れば、その視線はジャンロンの右腕へと向けられていた。
「....?」
「あ、メイメイ...、!」
今は上から上着を纏っているとはいえ、触れられたら自身の右腕が欠損していることが露見してしまう。
なるべくならメイメイに余計な心配をかけたくはないと考えるジャンロンは慌てたように身を引くが、それよりも先にメイメイの手が上着の右腕部分に触れた。
そしてそのまま、本来あるはずの腕の感触なく、くしゃりと服は潰れる。
「...!...ぅぅ...?」
「...っ..、あの、メイメイ...これは、この前の任務の時に少しヘマをしてしまって」
「...ぐる...ウゥ.....」
「心配いらないよ、大丈夫だから。ね?」
「....」
ジャンロンの言葉にメイメイは動揺したように瞳を揺らし、次の瞬間には低く唸り声を上げる。
すかさず安心させるようにその手を握って、ジャンロンは檻の隙間からメイメイを撫でた。
メイメイは元は人間であっため、過去には言葉を話す事だってできた。
しかし自分と同時期に無理やり組織に魔族を食わされ、今の姿へとなってからは、理性がなくなり組織の者でさえ手に負えないほど凶暴な存在と化してしまっている。
しかしそれでも、ジャンロンにだけは何故か心を許してくれているようだった。
今も全てとは言えぬものの言葉を聞き、僅かながらに理解もできているようで、ジャンロンの差し出した手に嬉しそうに身体を擦り付けている。
「...メイメイ。君のことはいつか必ず僕が助けてあげるから。それまでもう少しの辛抱だよ」
「...きゅる...、?」
穢れのない純粋な瞳にジャンロンは再びその頬を緩ませて、今もなお自身とメイメイの中に存在し続ける、かつての友人を脳裏に思い浮かべた。
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