代償

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「ヴェイル上等兵からの情報によると、研究施設はこの森を抜けた先のようです」 「...ラノ湖のさらに奥を進んだところにあるんですね。昨日近くまで来たはずなのに全く気付きませんでした」 「おそらく近くと言ってもかなり奥まで進まないと見えないのでしょう。町民たちも製薬会社の工場が森の奥にあるとは聞いている、という施設の表向きの顔しか認知してないようでしたし」 この件は慎重に進めなければならない。 そしてあの施設の中に何があるのか、何をしているのかを、この目で確かめる。 「...今日は場所の特定だけです。それが終わり次第、町で最近変わったことがないか情報を集めましょう」 「そうですね。今組織にこちらか動いていることを悟られるのもまずいだろうし、十分に情報を集めたうえで施設に潜入することに異論はないです」 ノイの言葉にブラーグは小さく頷いて、研究施設を目指し歩みを進めた。 「...外は人間が警備を固めていますね。...軍も絡んでいると言ってましたが、見る限りあれは軍人ではなさそうだ」 「...組織の人間、か。...魔族の姿は?」 「魔族はぁ...、っと...、見える範囲にはいませんね。人間だけです」 「わかりました。おそらくあの厳重に警備が敷かれている辺りがエントランス。裏口も確認したうえで今日は引き上げましょう」 「了解です」 ノイとブラーグはそれだけ言葉を交わし、慎重な足取りで施設の周辺の情報を探った。
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