代償

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「ブラーグ」 「あ、少佐。お疲れ様です」 気付けばもう完全に日が落ちていて、街には灯りが灯り始めている。 そんな中町での聞き取りをひととおり終えて昨日と同じ宿に戻ったブラーグは、中に入ってすぐにあるロビーでノイに呼び止められた。 ノイはブラーグを見つけてすぐに腰を上げ、そのまま宿泊している部屋へと足を向ける。 「...それで、そちらはどうでしたか。何かめぼしい話はありましたか?」 「いや、...やはり施設に関する話は町民も詳しくは知らないようでしたね。...ただ、関係あるかはわかりませんが、ここ最近子供が突然姿を消す事件が2件ほどあったとか。その子達は未だに行方がわからないままとなっているらしく、少し気がかりです」 「...なるほど。そちらでもその話がありましたか」 ブラーグの報告にノイはどこか翳りのある表情を見せて、考え込むようにして黒い革手袋の嵌められた指でとんとんと顎を叩く。 「...少佐の方でもそんな話を?でもこれは今回の任務とはあまり関係がないのでは...」 「いや。そうとは言い切れません」 「...え?」 「昨晩話したでしょう。...あの施設では十中八九、人体実験が行われている。前の任務でも子供の神隠しがあったわけですから、その件についても組織が関わっている可能性は十分にある」 「....」 「その行方不明になったという子供達について調べましょう。何か共通点があるかもしれない」 ノイはそれだけ言うと腰を上げ、懐から革製の手帳を取り出す。 そこにはいなくなった子供2人の名前、年齢、性別といった情報が記されていて、ブラーグはこの先どう動くつもりなのだろうかと再びノイに視線を移した。 「...誰かが手引きをしているはずです。いなくなった場所、その前に訪れていた場所、何でもいい。情報を集めますよ」 「は、はい!」 一体この平穏な町で何が起きていると言うのか。 ブラーグは底知れぬ不安を抱えながらも、神妙な面持ちでそんなことを言うノイの言葉にしっかりと頷いた。
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