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レオナと別れた後、カノンはレオナからもらった手作りのブレスレットを大事そうに腕へと付ける。
そしてクラークに連れられ施設の中をさらに奥へと進めば、蛍光灯の薄い光の漏れる一室へと通された。
中には複数人の人間の姿が見え、彼らは白い防護服のようなものを身に纏っておりその顔を窺い見ることはできない。
「...、...随分と物々しい雰囲気ですね」
「ああ。病を根絶させるには、少々危険な手段を選ばなくてはならなくてね。しかしこれもこの世界の未来をより良いものにするため。多少の強引さには目を瞑るほかないだろう」
「...この世界を..、?」
レオナの治療の名目でここへやって来たというのに、何故そんな壮大な話を急にしだすのだろうか。
カノンは困惑しながら隣に立つクラークに視線を向ける。
しかしクラークの目はこちらには向いておらず、部屋の鍵を閉めたかと思えば扉の横に掛かっていた、部屋にいる彼らと同じ防護服をごそごそと身につけ始めた。
「..、クラーク先生...?」
「カノン君。弟の治療のためには君の協力が不可欠だ。君には悪いが、人間の弟を愛する君ならそれもきっと理解してくれるだろう」
「...は?」
「何かを得るためには、何かを差し出さなければならない。魔族の君と、人間の弟...二人の関係性は、今日でより強固なものになることを約束しよう」
先程からわけのわからぬ事を口にするクラークに驚いていれば背後から布のような何かを被せられ、次の瞬間には後ろ手を強く引かれ拘束される。
そのまま身体に何か固いものが押し当てられ、びりりという強い衝撃を感じて、そこでカノンの意識はぷつりと途切れた。
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