代償

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それからさほど時間も経たずして、無機質な部屋の扉の外からがちゃがちゃと音が鳴る。 それと同時に重厚な扉がゆっくりと開き、入り口に立つ男はその体を横へとずらした。 「...、あ、先生!」 「やぁレオナ君。待たせてしまって悪いね、食事の時間だ」 「ううん、全然!今日僕何も食べてないからお腹空いたよ。...そういえば兄さんは?心配してないかな?」 「カノン君なら、君の治療に理解を示して最大限に協力してくれているよ。....さあほら、たんとお食べ。これで君の病気も良くなるから」 知り合ってから自分たちに良くしてくれるクラークの優しい声色にレオナは頷いて、その手に持たれている銀色のトレーを覗き込む。 そこにはトレーと同じ素材の簡素な食器と、湯気の立つごろりとした肉の入った煮込み料理が載せられていた。 「わぁ、美味しそう。肉なんていつぶりだろう」 「残さず食べなさい。これは大切な治療だから」 「うん、わかった!ありがとうクラーク先生!」 レオナはクラークからトレーを受け取り、ベッドの傍に置かれた小さなテーブルの上に置くと、早速手を合わせて食事に口をつけ始める。 それを見届けたクラークは背後に控える男たちを振り返り、小さく頷いた。 「...あれ、先生?もう行っちゃうの?」 「ああ。他にも君と同じように経過を見なくてはならない子達がいるからね」 「そっか、わかった」 それだけ言い残してクラーク達は部屋を後にして、扉に備え付けられた小さな覗き窓から、男達と共にその先の展開を見守った。
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