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施設の裏口。
エントランス程の警備ではないとはいえ、厳重であることに変わりはない。
そんな入り口を固める人間達を前に、ノイは茂みから瞬時に地面を蹴った。
そしてそのまま、低く身を屈ませて一人の男の足元を払う。
「...っ..、!」
男は突然の出来事に驚くが、声を出す間もなくノイによって鳩尾に打ち込まれた拳でぐったりと頭を垂らす。
ノイはその身体を離すことなく、異変に気付いた周囲の人間達へと向き直った。
「...貴様、一体何者だ...!カール、すぐにオーフェンさんに連絡を...!」
「動くな。そこから一歩でも動けば、この男の首を掻き切る」
「...っ..、くそ..」
今ここで事を荒立てるわけにはいかない。
ノイは気絶している男の首元に短剣を添わせたまま強い口調でそう言って、背後に控えるブラーグへと視線を向ける。
それと同時にブラーグは計画通り姿を表して、身動きの取れずにいる周囲の男達を手際よく拘束していった。
「...少佐、終わりました。無線も全て回収済みです」
「ありがとうございます」
「...、少佐..?あんた、軍の者か?何で軍人がこんな事を...」
「...何故?私達は本来軍人がすべき事を全うしているまでです。貴方達が知っている『軍』の姿とは異なるのでしょうが」
「...チッ..、」
まだ意識のある男はノイの言葉に忌々しげに顔を歪めるが、すぐにブラーグが頭の後ろから細く捻った布を噛ませて首の後ろを叩く。
ひとまとめに拘束された人間達をブラーグはいとも容易く持ち上げると茂みの中へと放り、地面に置かれた無線機も踏み潰して破壊した。
「...奇襲が掛けられたことに気付かれるのも時間の問題。先を急ぎますよ」
「...はい!」
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