新しい力

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 「っと!獲物(ぶき)が違うだけでこうも…チッ!」 四方から飛ぶスタンウィップにイプスは苦戦を強いられていた。それはサリバの特性上イプスの代名詞である金棒が機体に合わず、やむなく別のものを使用せざるをえなかったためだ。  「それに…!流石に軍の本部…数がサラミッド(さっきの場所)とは比べもんにならねぇ!うお!?」 気がつくと後方からのウィップに動きを封じられていた。  「チッ、この!!」 イプスはウィップを引き剥がそうとしたがそれもかなわずウィップに電流が流れる。  「うお!?」 バリバリと大きな音がコックピット内に響くとサリバは警告音とともに起動を停止した。  「1機停止!第3小隊と合流します!!」  「了解、こいつは破壊しておく。」 イプスは直ちに機体を再起動させたが最短でも1,2分かかる。何度か声を出してみたがシードたちには届かなかった。  「フー、悔しいがここまでか。ま!あいつらにいいように使われるのもそろそろうんざりしてたことだ。さ!さっさとやってくれ!」 ドカリと背もたれにもたれかかり目を瞑った。-しかしいくらたってもつぶされる気配はなく、イプスは目を開けた。  「おい、生きてるか?」 突然シードの声が聞こえてきたかと思うとサリバの再起動が完了しコックピットに明かりがともった。周りを見渡すとサリバを拘束していたウィップは切断されており、イプスを囲っていたアルバトロスはすでに4機中3機移動していた。  「…死んだか?」  「おい!生きてるっての!!」 イプスは機体を起こし、シードの横に並んだ。  「オメェ持ち場はどうしたよ?…まさか俺が恋しくなったか?」  「もう潰してる。イプスはロンと合流してやってくれ。お前が寝てる間に向こうに向かった。」 そう言い残しシードはアルバトロスへ突進した。  「潰したってオメェ……っ…俺だって金棒がありゃなぁ!!」 ビービーっとコックピット内に大きな音が響いた。  「うお!?上か!」 イプスがその場を離れると上空から金棒が落ちてきた。  「必要かと思って持ってきてやったわ。…後退するから援護しなさいよ?」 イプスはフッと笑うと金棒を掴み、ホエイルと共にロンの方へ発進した。  「こちらに来るのなら!」 アルバトロスはバズーカを構え、シードの接近を待った。パイロットは頬を伝う汗をペロリと舐めた。今だ!という声と共に3発の弾を放った。シードは大きく飛び上がりそれを回避すると腰部に装備されたワイヤーショットを射出し、アルバトロスの右腕に突き刺した。  「こんなものまで…!くっ!」 背面部につけていたトロスクローを取り、ワイヤーに刃を当てた。ギリギリと音を立てるもワイヤーの切断には至らなかった。  「拘束しろ!!」 シードが腰部からワイヤーを外すとワイヤーは自動的にアルバトロスに巻き付いた。身動きの取れなくなったアルバトロスのパイロットはレバーをガチャガチャと動かしたがギリギリと音を立てるだけでついにワイヤーを切断することはできなかった。  シードはコックピットを貫いた。ガキンッという音が鳴り、アルバトロスは動かなくなった。  「5…イプスこっちは片付いた。すぐにそっちにー」 ワイヤーを回収しながら連絡を取っているとシードは何かに勘づきすぐにその場を離れた。その瞬間大きな衝撃が走り、あたりを破壊し尽くした。弾が飛んできた方を向くと腹部に大きな砲身を持ったジンカクがそこには立っていた。
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