プロローグ

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プロローグ

 西暦2630年、地球温暖化の進行により、海水面が上昇、陸地が減少し地球は地球人全員を支えることはできなくなり始めていた。各地で暴動が起きる中で、ある大きな出来事が起こった。。太陽で小規模な爆発が起き、その爆風で押された小惑星が太陽系の惑星に衝突した。幸い地球には影響はなかったものの、水星、金星にはかなりの影響が及んだ。水星は元々金星のあった軌道周辺に、そして金星は地球の軌道周辺に移動した。地球人はこれを最後の希望として300年の歳月をかけて金星を地球と同じ環境に整えた。さらに200年が経ち、金星は地球から独立し独自の道を歩み始めた…。  「それから、オッド!オッド・ラッシュ!」 ボーッとしてたところを大きな声が止めた。 「なんすか?」 頬杖をつきながら視線を先生の方に向けた。 「私が今読んだ場所を読んでみなさい。」 と言いながら、先生はメガネをクイっと上げた。 「何ページ?」 「108だ。」 「西暦2630年、地球温暖化により、海水面が上昇、陸地が…」 「120ページも読んでみろ。」 先生は少しニヤついてみせた。なるほど。なんとも性格が悪い。そう思いながら 「地球人の中には金星の緑化を反対する者もいたとされ、デモに発展するケースも…」 「……167ページ」 「チッ、金星を緑化する際、巨大人型ロボットである宇宙活動用人型外骨格、通称が使用され…」 バンッ!という音が声を止めた。 「き、今日はこれまで。次までに170から200ページを読んでおくように。」 先生が額の汗を拭きながらそう言った。 「暗記するほど読み込めと言ったのはあんただぜ?教科書がないだけで読めないと思ったのか?」 皮肉を言い、オッドは椅子から立ち上がり、近くにあった鞄を拾い上げ部屋を後にした。部屋の中からドタバタと暴れている音がしている。なんとも大人気(おとなげ)ない。屋敷から出て行こうとしたところで 「オッド!」 と呼び止められた。 「ラジニールか。」 振り向かずに答えた。 「お前も名家ラッシュ家の一人なら名に恥じぬよう行動しろ。」 足でトントンと音を鳴らしている。怒った時のラジニールの癖だ。 「親父の教えはなんでもいい、〝学びを止めない″ことだ。俺もちゃんと学んでることはあるさ。」 「だからといって父様の用意した学びの場を捨てていいわけじゃないだろ。今からでも先生謝ってくるんだ。」 「…」 黙ってドアノブを回した。 「ラッシュ家の未来は僕達にかかっているんだぞ!」 大きな声でラジニールが言った。 「ラッシュ家の後取りは兄貴だ。兄貴に任せるさ。」 そう言い切り、オッドは外に出た。ドアが閉まったと同時に 「僕じゃダメなんだよ。僕にはオッド、お前のような器量はない。」 膝を崩し、嘆くようにラジニールが言った。オッドには聞こえないように。    ラッシュ家の領土の街、ヒルバーン。この街は貧困層が住むため、ラッシュ家の人間は忌み嫌っていた。しかし、オッドにとっては監視下も連れ戻しにくる屋敷の人間も来ない都合の良い場所だった。 さらに、パン屋のおばさん 「あらぁ。オッドこんにちは!」 酒飲みのオヤジ 「おお!オッドじゃないか!」 子供たち 「オッド元気ぃ?」 といったどんな人も気さくであり、オッドを変に特別扱いしない。そこもまた、都合がよかったのだ。 「おう!元気だぜ。」 オッドは元気よく答えた。そのまま走り抜け、大きな廃工場に着いた。 「待ってたよオッド!」 そこには髪の長い小柄な少年が立っていた。 「悪いな、カイ。兄貴に捕まってよ。」 息を切らしながら答えた。続けて、 「の調子はどうだ?」 と聞いた。 カイはニコリと笑い、 「オッドの持ってきてくれたパーツを取り付けたことで、コンピュータが動き出したんだ!もうすぐ完成さ!」 そのまま2人でドアに近づき、カイが倉庫のドアに手をかけた。 ギギギギッと大きな音を立ててドアが開いた。 庫内に入り、思わずおおっと声が漏れた。 「本当だ。動いてやがる。俺たちのジンカクXが!」
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