レンタル恋心

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「おやおや、人は見かけによらないねぇ。恋をしてみたいと思わないのかい?」 「どうなんだろう…、それさえも分からないの。けれど、別にしなくてもいいかなとも思うわ。恋愛が人生の全てではないだろうし…。ほら!恋愛以外にも、大切なことってたくさんあるじゃない?」 「それはそうだねぇ。けれど、恋愛が加わると人生の‟色味”も変わったりするものだよ。どれ、せっかくだから特別に、この場で少し貸してあげようかねぇ」 「えっ?」 よっこらせと立ち上がったお婆さんは、棚から何かを取り出し、すぐにこちらへと戻ってきた。 「私がレンタルをしているものは、これさ」 「これって…」 そう言って、お婆さんが私の前に差し出してきたものは、なんとピンク色の。 この空間にあまりにも似つかわしくないそのヘルメットは、一見何の変哲もない。 これをわざわざレンタルしているとは、いったいどういうことなのだろうか。
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