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「ヘルメット…よねぇ、これって。お婆さんはなぜこんなものをレンタルしているの?バイクなんかも見当たらないけれど」
キョロキョロと店内を見渡す限り、バイクや自転車といったものもない。
疑心暗鬼でヘルメットを受け取った私は、手元でそれをくるくると回し見た。
うん。どこをどう見ても、やっぱり普通のヘルメットだ。
「私がレンタルをしているものはね、人の恋心さ」
「へ??」
思わず、喉の奥から変な声が出てしまった。
けれど、お婆さんの表情に変化はない。…その様子から察するに、冗談を言っているようにも見えないけれど。
「たとえば、今恋をしている友達の顔を思い浮かべて、そのヘルメットを被るとするだろう?するとその友達の恋心を、お前さんが体感することができる、といった仕組みなのさ」
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