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上目でお婆さんを見つつ、私は今一度ヘルメットを手に取った。
そして目を瞑り、ゆっくりと呼吸を整えてからお姉さんの姿を思い浮かべ、ヘルメットを被る。
「……っ」
ーーー苦しい
胸が、心臓が、とても苦しい。
風邪を引いた時とも違う、その苦しさに、私は思わず制服の胸元をギュッと握りしめた。
瞼の裏では、お姉さんが部屋の隅っこでスマホを握りしめて泣いている。
好きで好きで好きで……。
こんなにも好きなのに。自分だけを見てくれないと、分かっているのに。
どれだけ想っても、どれだけ追いかけても、あの人は振り向いてくれないのだと、頭では分かっているのに……。
それでも……
「好きなんだ……」
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