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「大丈夫かい?」
ヘルメットを外した私の頬に、一筋の涙が伝った。
‟私自身”が悲しい訳じゃないのに、苦しい訳じゃないのに、お姉さんの切ない想いが私の中でいっぱいになって、自然と涙がこぼれ落ちたのだ。
「…辛いのに、もうやめたいのに、それでもやめられない恋愛というものが、世の中にはあるのね……」
「あぁ、そうだねぇ。恋をすると、人は頭と心が一致しなくなってしまう、なんてこともあるのかもしれないねぇ」
「そうなのね…。だけど、やっぱりお姉さんは幸せになってほしいわ。…幸せな恋愛をしてほしい」
ヘルメットをお婆さんに返し、私は子供のように袖で涙を拭った。
お姉さんの気持ちは、痛いほど感じることができたけれど、あんなにも苦しい思いはやっぱりしてほしくない。
泣くような恋愛ではなく、笑顔溢れる恋をしてほしい。
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