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もしかすると、明かりがついているだけでこのお店ももう営業をしていないのかもしれない。そう考えることが自然だ。
だって、この辺りを見渡してもやっているお店なんて一軒も…
「いらっしゃーい」
「きゃあ!!」
目だけを動かし店内を覗き見していたその時、ずっとその場にしゃがんでいたのだろうか…。向こう側から突如、白髪頭のお婆さんがぬっと立ち上がり、顔を出した。
驚いた私は反射的によろけ、その場に盛大に尻もちをついてしまった。
「おやおや、大丈夫かい?驚かせるつもりはなかったんだけどねぇ」
カランカランっという軽い鈴の音と共に、表情一つ変えずドアを開けたお婆さんは、唖然と座り込む私を見つめ、スッとしわくちゃな手を差し出した。
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしさと困惑で、私は俯きつつも差し出された手を握り、立ち上がる。
地面に打ち付けたばかりのお尻が、ジンジンと痛んだ。
「可愛らしいお嬢さんだこと。お客さんかい?」
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