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パーテーションで区切られた六つのブースの内にはテーブルと四脚の椅子がおかれていて、そのひとつに依頼人の男性が一人で座っていた。
「お待たせしました。担当の先野と申します」
白い上下のスーツ姿のままで、先野は名刺を差し出す。
依頼人――沼瀬由安は、先野の服装に一瞬目を白黒させたが、そんな動揺もすぐに治まり話し始めた。
曰く、家族をさがしてほしい、とのことであった。マネージャから事前に聞いた情報に間違いなかった。
「ご自身で、いろいろと調べてはみたんでしょうね……」
分厚いシステム手帳を開き、ボールペンでメモをとる先野。
「ええ、まぁ……」
はっきり言わないところに、家族に逃げられてしまったという負い目を感じているのがわかった。近所に尋ねようにも気まずくて尋ねられないのだろうと想像する。きっと勤め先にも伝えていないに違いない。
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