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今回の依頼者である沼瀬も、しばらく海外赴任でその間一度も帰国せずにいたというのだから、その可能性は高いだろうといえた。いくら仕事が忙しいといっても、高校大学への進学期の子供を一顧だにしなかったのはさすがにまずいだろうと、出ていった家族に同情した。
それでも、どんな事情があるにせよ、依頼ではあるのでさがしはする。ただ、見つかったとしても、依頼人と会ってくれるかどうかまでは保証できない。拒絶されるかもしれないのだ。そのときは、そういう運命なのだとあきらめてもらうほかない。
しかしそういう仕事だけの人間を、先野は他人事とは感じられない。先野自身もそうだと自覚していたから。
だからおれは家庭を持たないのだ――。
独身でいつづける理由を先野はそう主張する。決して、女に相手にされないからではないのだ、と。
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