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先野には、しかしそこがどうにも不可解だった。家庭内暴力などが原因で、亭主に気取られないようにして夜逃げするというならわかるが、今回のように家族を顧みないからと愛想をつかされて出ていくのなら、もっとあからさまに離婚の意志を伝えてくるのが普通だった。
これが事故か犯罪に巻き込まれての行方不明なら警察が動くかもしれないが、部屋に家財道具の一切が残っていないというのでは事件性はなく、先野が知る限りそんな前例はなかった。
もっとも、先野とてこれまでさまざまな人と接してきたため、常識的な考えの人間ばかりではないと心得てはいたが――。
翌日、次の手がかりへと向かった。
妻の実家であった。
新幹線に乗り、京都府福知山市へと向かった。
沼瀬は妻の実家の住所も電話番号も知らなかった。というか、憶えていなかった。スマホにも登録されておらず、すべてを妻に任せていたことが仇となった。
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