誰も知らない一家

10/13
前へ
/62ページ
次へ
 が、反応は思わしくなかった。 「そうですか。――私は探偵をやってまして、延尾さんってかたをさがしているんです。もし、どなたか知っているかたがおられたら、知らせてくれませんか?」  先野は名刺をわたし、次の聞き込みへと向かう。探偵は地味な聞き込みが大事だ。ネットで検索するように簡単に解答にたどり着くなんてことはない。まったく足取りがつかめない、ということもあるのだ。  しかし今回は……どこかで見つかる案件のはずだ、依頼者の情報が正しければ。  ところが、その後聞き込みを続けるも、延尾家の存在を知る人に出会えなかった。  なぜ見つからないのか――。  大きな町ではあるものの、ピンポイントで地区がわかれば、知っている人に出会えそうなものなのに。長く住んでいれば、地域コミュニティに知られているはずだ。なのに……。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加