誰も知らない一家

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 先野はひとつの可能性を疑いだしていた。  前提条件が間違っているのだ。  沼瀬の妻の実家は、福知山市には存在しない。  しかし、そんなことがあるだろうか。行ったことがあると地図まで見せて、間違うなどということが――。  ぽつりぽつりと雨が降り出してきた。  先野は舌打ちをし、捜索を打ち切った。外出は基本的にクルマを使う地方都市で、雨天では通行人もいなくなる。  本降りになる前に、予約していた駅前のビジネスホテルに向かったが、ホテルに辿り着く前に本降りになってしまい、傘をもってなかったためにずぶ濡れになってしまった。ついていない。部屋でドライヤーで乾かす。  明日も聞き込みを続けるか、それとも打ち切るか――。  しかしここで捜索を断念したとして、他に手がかりがなかった。
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