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妻の実家ならなんらかの情報は得られるに違いないと踏んだ先野のプランはここに潰えた。
煙草を吸って気分を落ち着けたいところだったが、あいにくホテルのこの部屋は禁煙だった。最近は、この部屋ばかりでなくどこへ行っても禁煙で、喫煙者は肩身が狭い。
シャワーを浴び、コンビニで買ってきた弁当を平らげ、先野はなぜ見つからないのかを考えた。
結果、やはり依頼者の家族は最初から存在しないのだ、という結論に帰結する。実家がないのだから。
夫に一言も告げずに引っ越すなどということが、いくら愛想がついたといってもありえるだろうか。二人の子供も幼児ではないのだから、自分の意見も主張せずに母親について行くとは考えにくい。
つまり、あのマンションの部屋には、もとから誰も住んではいなかった。
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