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ではなぜ依頼者は探偵に多額の費用を払ってまで、存在しない家族をさがしているのか――。
存在している、と思っているからだ。
しかしそれはどういうことなのか。
存在しない家族をなぜ存在すると思い込んでいるのか、そしてその部屋の鍵を沼瀬が持っている、という二点の謎が解けない。
「なにかまだおれのわかっていない事実があるのだろうな……」
先野はひとりつぶやき、システム手帳を開いた。わかっていることと、考えられる可能性をメモしていった。
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