19人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
スマホに電話をしてみるも、解約でもされているのか繋がらないし、メッセージを送っても読んだ形跡すらない。
妻も息子も娘も連絡がつかず、沼瀬はわけがわからない。
明日から出社する会社に電話してみると、こちらは繋がった。
後輩である部長にとりついでもらった。
「今日、帰国でしたね。長くの海外赴任、どうもお疲れさまでした」
電話口で労ってくれるふたつ年下の部長の口調は陽気であった。
「ああ、これからは日本で定年までの最後のご奉公だよ」
年齢的に今後の海外赴任は、本人が望まない限りは辞令されない。そういう社内の規定であった。国内での転勤はわからないが、家族とともに暮らせるのはほっとするところだった。
「しばらくは休んでもらってもかまわないですのに。時差ボケもあるでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!