家族消失事件

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 スマホに電話をしてみるも、解約でもされているのか繋がらないし、メッセージを送っても読んだ形跡すらない。  妻も息子も娘も連絡がつかず、沼瀬はわけがわからない。  明日から出社する会社に電話してみると、こちらは繋がった。  後輩である部長にとりついでもらった。 「今日、帰国でしたね。長くの海外赴任、どうもお疲れさまでした」  電話口で労ってくれるふたつ年下の部長の口調は陽気であった。 「ああ、これからは日本で定年までの最後のご奉公だよ」  年齢的に今後の海外赴任は、本人が望まない限りは辞令されない。そういう社内の規定であった。国内での転勤はわからないが、家族とともに暮らせるのはほっとするところだった。 「しばらくは休んでもらってもかまわないですのに。時差ボケもあるでしょう」
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