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部長は気遣ってくれる。有給休暇も未消化であったし、何日か休んでもいいと言われていた。が、知っている人間の誰とも会わないでいるというのは、想像以上に精神的によくない気がした。
「いや、なにも問題ない。明日から頼むよ。久しぶりにみんなの顔も見たいからな」
当たり障りのない会話が続いた。家族のことは言えなかった。会社の人間には関わりのない話だったし、話しても当惑するばかりだろうと、電話を切った。
「しかし、どうしたもんかな……」
沼瀬は天井を見上げてつぶやく。
それからカーテンのない窓から外を見やった。三階から見えるのは、どんよりとした梅雨空であった。
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