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いちいち気にしていられない。先野はそう割り切っていた。もっとも、公園で目撃したのを最後に沼瀬の消息も不明で、そのときに会っていた若い女も尾行に失敗し見失ったきりであったから、もう調査に進展は望めない事態であるということもあって、調査中止はむしろ歓迎というのが正直な心境だった。
尾行がまかれてしまったことに関しては、先野は鼻をへし折られたように感じ、
(このおれが尾行をまかれるとはな……)
と、反省しきりではあったが。まるで手品でも使われたかのように、角を曲がった途端消えてなくなっていたのは、尾行に気づかれていた証拠だといえるだろう。
もしかしたらあの若い女は、沼瀬が雇っていたべつの探偵だったのかもしれない。玄人だったとすれば、尾行をまかれても、さもありなんである。
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