19人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
探偵の勤務実体の把握をきちんとおこない、きちんと休んでもらわなければならないのである。それでいて効率よく働いてもらって、会社としても利益をあげるのがマネージャの仕事であった。
なのだが……。
「先野さん、今日は出勤日ではないでしょうに、なんで事務所にいるんですの?」
マネージャは、デスクで週刊誌を読んでいる探偵に声をかける。
先野光介、三十八歳。
いまどき仕事が趣味だといってはばからない独身男である。事務所内ではいつも白い上下のスーツを着用し、白のソフト帽をかぶっている、ある意味イタい人であった。
もっとも、髪を紫色に染め、アイシャドーもばっちりのマネージャにしても、青い髭剃り跡に塗ったアフターシェービングの香りも強く、尖った個性を強烈に発揮していたものだから、先野のこだわりのファッションもここではさほど目立たなかったが。
最初のコメントを投稿しよう!