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(沼瀬が姿をくらましたときのあの強烈な光も、あの女がすでにこちらの存在に気づいていて、なんらかの意図をもって牽制したのかもしれない……)
いまとなっては、確かめる術もない。あの女探偵(であるかもしれない)の足取りをつかもうにも、なんの手がかりも得られないだろう。かなりのやり手だと、先野は思っている。
いつまでも引きずってはいられない。
新たな案件が入っていた。次は浮気調査だ。気合を入れて取り組もう……。
☆
「どうもお待たせしました。探偵の三条と申します。今回の案件を担当させていただきます」
面談ブースで待っていたのは、三十代半ばぐらいのメイクの厚い中年女性だった。
椅子から立ち上がり、どうも、と頭をさげる。
三条愛美はテーブルの向かい側に座り、
「では、ご依頼をおうかがいします」
と、笑顔を向ける。
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