約束された勝利

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約束された勝利

 一つの国があった。その国、ストロウ共和国は狭いながらに肥沃な大地があり、米・小麦・玉蜀黍の三大穀物がいずれもよく育ち、世界の穀倉と呼ばれていた。世界中の国々がこの国の穀物を輸入しており、最大最高の貿易相手と考える国は多い。これによって、ストロウ共和国は穀物の輸出のみで世界トップクラスの経済大国へと上り詰めたのである。自国が持つ肥沃な大地を活かしきり、第一次産業の発展に全力を費やした賜物であると言えるだろう。  だが、ストロウ共和国には一つの欠点があった。軍事力を一切持っていないのだ。過去、何度か世界を巻き込んだ大戦が行われたのだが、ストロウ共和国は兵站の一部である「兵糧」を中立的立場で各国に輸入することで、戦争に巻き込まれずに済んできた。いずれかの国への肩入れも要求されてきたのだが、それすらも突っ撥ねることを可能にするぐらいに、ストロウ共和国との穀物の貿易は力を持っていたのである。 当然、ストロウ共和国は他国との戦争の経験はない。戦車や戦闘機や潜水艦を保有する訳がない、それどころか武装の類は警察官が持つ38口径の拳銃や、山奥暮らしの老人が趣味で持つ猟銃ぐらいしかない。機関銃はおろか、軽機関銃の一丁すらもストロウ共和国にはない。爆弾と呼べるものは採石場の発破用のダイナマイトぐらいしかない。  兵力は無いが、世界でもトップクラスの経済大国。その経済力を活かして政府は企業に積極投資をし、一次産業・二次産業・三次産業はより発展し、その先にある四次産業・五次産業に類するIT・芸能を中心とした娯楽産業も世界トップクラスにまで発展した。当然、福祉も充実しており、貧困とされる国民は存在しない。何不自由ない理想郷(ユートピア)の構築に成功したのである。
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