約束された勝利

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 やっとのことで手に入れた平和。これも軍事力を持っていなかった故に与えた隙が原因。 平和の維持には軍事力の確保も必要である。周りの国が軍事力を持っている以上はこちらも持たねばならないとして、兵器の確保、志願兵の募集、隣国との軍事同盟…… 平和を維持するための努力を繰り返し、ストロウ共和国は10年をかけて世界トップクラスの軍事力の確保に成功した。これまでも中立国ではあったのだが、強大な軍事力を盾に永世中立国であると宣言し、どこの国の争いにも介入しないと決めた。自らが借りたレンタル兵士によって行われる戦争という行為の愚かさを知ったからである。  大統領も任期を終えようかと言う時、大事件が起こる。何と世界を左右に二分する世界大戦が勃発したのである。ストロウ共和国はこれまで通りに中立を貫き通していたのだが、ストロウ共和国の穀物を確保した(がわ)が兵站的にも経済的にも勝利出来るとあって、左右のどちらかにつくかの選択を迫られてきた。 そんなある日、大統領は空爆の報せを受けた。その空爆によって空港は占領され、制空権を失った。国境近辺の戦車隊も鶴翼の陣にて包囲され壊滅状態、港も大艦隊によって包囲済、この手口には覚えがある……  そう、レンタル兵士の手口だ。どうやら、左右のどちら側かは知らないがレンタル兵士を雇って我が国の制圧…… いや、侵略に乗り出したようだ。じきに来ると思われるレンタル兵士の提案にイエスと答えなければ我が国は灰燼と帰すだろう。レンタル兵士は雇い主の味方で、交渉が通じる相手ではない。このことは大統領がよく知っている。 大統領はこの世の不条理を噛み締めながらレンタル兵士の襲来を待つのであった……                             おわり
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